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 欧米の発想にとらわれることなく、患者さんの自由な発想の中から、「試せる入れ歯」を作ってみて日本人に特有ないくつかの傾向があることがわかりました。
 それは、次のような傾向です。

① 本人は、クラスプ(歯に引っ掛ける金属のバネ)が歯を締めつける感覚をとても不快に感じる。あるいは締めつけが強いと感じる。
② 日本人は、トレーニングによって、かなり器用に入れ歯を使いこなせる。
③ 日本人は、口の感覚が敏感である。味や匂いの感覚も繊細で、入れ歯の薄さや軽さによく気がつく。そのため、頑丈さより繊細な作りのものを好む。
④ 日本人は、模型的な美しさより、自然な美しさを好む。ゆえに歯並びは左右対称なものよりいくらか揺らぎのアレンジを加えた方がよい。
⑤ もう一つ、日本人(特に女性の方)は、人前で外さなくてもよいような工夫をしなければならない。レントゲンやCT検査の時に入れ歯を外したくない方が結構おられる。また友人と旅行に行っても、夜も外したくないという方は多い。
⑥ さらに日本人女性の場合には、しゃべる時あるいは歌う時に発声を邪魔しないものを求めるレベルが、男性よりもハードルがやや高い。

 これらの基本事項を念頭において、カスタムアップしていくと、うまくいく場合が圧倒的に多いです。もちろん前にも述べているように、先入観で作ってしまうと、不都合が生じることもありますので、うまくいかないと判断すれば、そこにこだわらないように気をつけています。

 「入れ歯は、落ちない、動かないぎりぎりのところで使いこなせるものが良い」と第2章で述べましたが、これを日本人の傾向と重ねると、かなり限界に近い入れ歯を作ることができます。特に、クラスプを使う必要はなくなります。
 私は「入れ歯が外れる不具合はクラスプで改善」という欧米型の発想からそろそろ抜け出るべきではないかと思います。また、クラスプを使わない入れ歯もこれまでありましたが、構造や加工が複雑で、壊れた時に修理もできなければ、歯を傷める可能性のあるものが多く、長期的に歯にリスクの少ないものをと考えるとおすすめできないところです。

 また、入れ歯にかかった費用の割には、入れたその時が入れ歯の最高の状態で、あとは歯周病による歯の揺れや、虫歯などによって、使えないものになってしまうものが多いように思います。もちろんクラスプやコーヌスも素晴らしい技術ですが、それ以外に外れない方法を考えなければ、入れ歯は飛躍的に良いものになりません。外れない入れ歯ということよりも、外れてもよい、外れることがメリットと患者さんに理解してもらうことも一つの治療だと思います。
 とにかく、複雑な装置など必要とせず、歯に強い締めつけがなく、シンプルに歯に留まるということはとても素晴らしいことです。それは虫歯になりにくく、歯周病にもなりにくい、歯に負担をかけない、壊れにくい、費用がかからないなどメリットが数多くあります。

 デザインはまさに「シンプル・イズ・ベスト」です。いかに単純な装置を作るかが、試せる入れ歯作りのポイントになりますが、これを可能にしたのが、私の開発した金属床の入れ歯であり、これこそ「試せる入れ歯」から進化した究極的なデザインだと思います。



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「入れ歯治療の新発想」


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