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入れ歯を日本人に合わせて

 私は、入れ歯はその患者さんの性格によるところが大きいと思っています。必ずというわけではありませんが、日本人は欧米人に比べて、器用で、繊細で華奢(きゃしゃ)です。神経質でありながら我慢強い。また他人がどうなのか気になる。これらの性格をふまえると、必ずしも欧米型の入れ歯作りをすべきではないのかなと思います。

 例えば、はずれない頑丈な入れ歯より、無理な力が加わればはずれてしまうほうが、残っている歯にはいいのかもしれません。また歯並びも、見た目が模型のようにきれいなものより、少しアレンジが加わったほうがより自然な感じが出るでしょう。硬すぎるものを噛んだときには入れ歯が割れてくれるくらいの厚さのほうが脳や粘膜への衝撃が少ないとも言えます。

 私は、口の中だけではなく、顔色や目の動き、音、動作、匂いなど五感を働かせ、患者さんをつかむことに専念しますが、やはり話をしていただかないことには始まりません。お医者さんの中には、私は黙っていても患者さんを見れば悪いところがわかるという人もいますが、私は占い師ではないので、患者さんの悪いところを言い当てることに全く価値を感じていません。むしろ話をしっかりしてもらい、より正確な診断をすることの方が、大切ではないかと思っています。

 私には診療室でのコミュニケーションが患者さんに関するすべての情報です。私に気をつかい、うまく話せない患者さんからはなかなか本音が聞きにくいため、あえておかしい状態を作って反応を見てみたり、治療に積極的な人には、より正確な説明を加えたり、逆にほとんどしゃべらない人には、歯を治すより先にするべきことが無いのかどうかを考えないといけません。

 こちらから積極的に話を仕掛けるのがいいのか、患者さんの話したいことをまず聞くのかは、それこそこれまでつちかってきた人付き合いの経験に頼らざるを得ないところです。後はとにかく何度も何度も繰り返し口の中と、入れ歯を見ることです。それにより、もっと正確にその患者さんに近づいていけますし、ささいな変化を察知し、新たな発見が生まれてきます。

 本当になかなか患者さんは本音を言ってくれないものだと思っています。しかし考えてみたら、私も患者さんの立場になった時、そうであったことを考えるとよく理解できます。自分の手ごたえの半分くらいに見積もってちょうど良いくらいなのかなと感じています。もちろん患者さんから、それ以上の手ごたえを感じる場合もあり、時には嬉しいこともあります。

 入れ歯は物の満足度より、気持ちの満足度によるものが大きいと思います。どちらも大切ですが、日本人の気持ちの満足度を満たすためには、じっくり話し合って時間をかけて入れ歯を作っていく歯科医院も必要なのではないでしょうか。

 余談ですが、このサイトを見た私の父親が、「うまくいかなかった時、それはあなたの気のせいだとか、あなたが神経質過ぎるからと言われそうだ」と感じたとのことでひと言付け加えさせてください。
 私にも、もちろん治療がうまくいかないこともあります。しかし、その時になってはじめて、うまくいかなかったことを患者さんに伝えたことはありません。予測の付かないことは極力避けています。またうまくいかなかった時は、その原因を探し、必ず次の手段を講じます。逆に後がないような治療はどんなに患者さんにお願いされてもお断りしております。

 また患者さんが神経質そうであれば、治療を始める前にそのことを患者さんにお伝えしております。あるいは、さまざまな方法で実際試してみて、できるだけ正確に入れ歯を入れたときの感じ方を理解していただき、本当にやっていけそうだという患者さんの意志が確認できるまで治療はいたしません。うまくいかなかった時の結果を、その時になって患者さんのせいにすることはありませんのでご安心ください。



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