2019/03/23
入れ歯を長年使われていて、調整やチェックに行かれていない患者さんの場合に、自分ではしっかりと噛んでいるつもりでも、実はあまり噛めていなかったということはよくあります。
入れ歯は、半年から1年使うと、噛んでいる部分の歯が少しすり減って、かみ合わせが変わってきます。この段階で修正・調整を行えば、半年から1年の間、また快適に過ごせるのですが、そのままにして長期間、調整もチェックもしないでいると、だんだんと噛みにくくなってきます。
この変化に気づく患者さんもいますが、半数の患者さんは、かみ合わせの変化というよりも、入れ歯が少しはずれやすくなったとか、入れ歯が前よりもガタガタ動く気がするという風に言われます。
実はその原因は歯がすり減ったことによるかみ合わせの変化なのですが、ほんの少しづつの変化なので感じにくいのです。
当医院では、極薄のカーボン紙で細かくチェックもしますので、全体的に均等に噛んでいるかどうかすぐにわかります。そして、大変な作業ではありますが、全体的にバランスよく噛んでいる状態まで整えます。
すると、ほとんどの患者さんが、「あっ。噛んでます。しっかり奥まで噛んでいます。来る前とはぜんぜん違います。」と言われます。
切れない包丁の刃を研いでもらったら、よく切れるようになったような感じでしょうか。
「入れ歯がしっくりくる」とおっしゃいます。
そして、これくらい噛んだ状態になると、入れ歯が上も下もピッタリと歯ぐきに密着します。かみ合わせの調整で、入れ歯が歯ぐきにさらに良くくっついた状態になります。吸着がアップしたと専門的には言いますが、入れ歯をはずしにくいくらいに、ピッタリひっつくこともよくあります。
かみ合わせの調整は入れ歯で非常に大切な要素です。
2019/02/26
堀ちえみさんのニュースから、口腔がんに関心を持たれている人がかなりいらっしゃるようで、さまざまな原因から口の中の口腔がんにつながる可能性があることが、歯医者さんからも言われています。
その中には、合わない入れ歯が原因で、常に刺激を受けることで口腔がんになることもあるというお話でした。
われわれ入れ歯を専門に作る者としましては、自分で作った入れ歯が原因で口腔がんになるというようなことは絶対にあってはならないですし、そうではなく患者さんに合った適正な入れ歯を提供して行くということを肝に銘じないといけません。
入れ歯というのは、天然の有機物ではなく、あくまで人工物で無機物です。
人工物である入れ歯をいかに有効な義歯にするかが、われわれのポイントです。
かみ合わせ、装着感、見た目、しゃべりやすさ、すべてを100点満点にするのは至難の技ですが、毎回100点満点を目指すのは当然のことであります。
その際に、私が一番大切だと思っているのは、形です。形態、デザイン、フォルム、設計すべて要は、良い形にすることだと思います。
かみ合わせが絶妙なのも、かみ合う面が絶妙に削られて、調整されて、形作られているから、しっくりします。
一人一人の患者さんのかみ癖やあごの形に合わせて、入れ歯の形も理想的に作り上げれば、口腔がんになるなんてことがないような、生活にとって大切な一品になると思っています。
堀ちえみさんの告白のニュースにより、なおさら気を引き締めて、入れ歯作りにのぞんでいきたいと思います。
皆様も、できるだけご自身に合ったストレスのない入れ歯を求めてください。
2019/01/21
作り手が直接、患者さんと接しながら入れ歯を作っていける環境というのは、本当にありがたいもので、技工士としましては、非常に作りやすく、やりがいのある仕事になります。
今年も、たくさんの患者さんに、来ていただいた時よりも数段ステップアップした入れ歯を提供できるように、尽力していきたいと思っています。
入れ歯は、道具であり、生身の歯やハグキではないですが、毎日の食生活だけではなく、対外的な社会生活においても、非常に大切なアイテムの1つです。
作った入れ歯が、1人1人の患者さんにとって、使い慣れた最高の道具になるように、ぜひご一緒に取り組んでください。
あーでもない、こーでもないと共に会話をしながら、より良い入れ歯になるように本年も努力いたします。よろしくお願いいたします。
2018/12/25
秋からちょっとハードな忙しさもあり、ブログ更新をしておりませんでしたが、当医院は、今年もあと1日となりました。
今年もたくさんの患者さんの入れ歯を作らせてただきまして、院長の指示で大勢の患者さんの入れ歯も調整してきました。
自分が一から作った入れ歯を最後まで見届けながら、自分で調整できるのは、本当にありがたい環境です。
院長とともに、できる限り良い状態の入れ歯になるように取り組んでいます。
見た目、かみ合わせ、装着感、発音、そのほか数え上げれば切りがないくらいの要素が入れ歯にはありますが、患者さんから「OKです」という言葉をいただくために、日々精進しています。
1つとして同じ入れ歯はないので、1人1人に絶妙に合った入れ歯を目指して、熟考しながら作り上げています。
たいへんな入れ歯もありますが、患者さんから喜びの声や満足だった言葉をいただくと、仕事の疲れはいっぺんに飛んで、ただただ嬉しい限りです。ありがたいものです。
また、来年も新しい入れ歯をたくさん作れることを願って、本年最後のブログにさせていただきます。今年はどうもありがとうございました。来年もかわらずよろしくお願い申し上げます。
2018/10/20
先日、横浜のみなとみらいにある、パシフィコ横浜という会場で、4年に1回行われる歯科の大きな祭典である、ワールドデンタルショーがありました。
私の勤める医院の近くでもありますので、休日見学に行きました。
規模の大きさはやはり4年に1回なので大きく、さまざまなブースがあり、セミナーも多く行われておりました。会場を訪れる歯科関係のお客さんの数も多く、歩き回るのが大変なくらいの賑わいだと思いました。
しかしながら、非常に残念だったのは、あまりにも入れ歯に関することが少なかったことです。入れ歯関係のブースの数もセミナーも本当に少なかったです。
以前、ブログでも入れ歯を熟知している歯科医師は1割いないかもしれないと書きましたが、それ以上に入れ歯が端っこに追いやられている感じがしました。
入れ歯を専門とする歯科技工士としましては、残念で仕方がないです。
全国の入れ歯患者さんは3000万人(厚生労働省)もいるのに、なぜ入れ歯に関する内容がこれほどまでに少ないのか。かなりさびしい状態で、そんなにも入れ歯に対してやる気がないのなら、いっそのこと、入れ歯は入れ歯専門の技工士にまかせてほしいという気になります。
入れ歯も非常に大切な道具で、難しい仕事ですから、本来は歯科医師にもっと力を入れて取り組んでいってもらいたいのですが、やはり治療関係のこと、インプラント関係のことにどうしても興味があるようです。
入れ歯は物であり道具作りであって、しかも作っているのは技工士で、クオリティの高い入れ歯ができると、ほとんど調整しなくてもセットできるので、口に入れるだけという時もあるでしょう。
歯科医師の作業は型どりとかみ合わせと調整くらいなので、あまり仕事として面白さが出てこないのも仕方がないとは言えます。
このあたり、歯科技工士の役割、患者さんへのサービス面など、いろいろな面で全国的にもっと良い形に動いて行かないかな?と思います。
あまりやる気がない人がやるよりも、やる気のある者が一生懸命に取り組んだ方が、良い方向に向いていくんじゃないかと、個人的には思います。