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義手。義足。そしてわれわれが作っている義歯。①

春にパラリンピックがありましたが、われわれ歯科技工士と似たような職種として、義歯装具士さんがいらっしゃいます。

 

義歯装具士さんは、医者の処方箋に基づいて、患者さんに合わせた義手や義足を製作する仕事です。われわれ歯科技工士も、歯科医師から出される技工指示書というものに基づいて、さまざまな義歯や詰め物、かぶせ物を作ります。

 

義歯装具士さんとの大きな違いは、義歯装具士さんは直接患者さんに触れながら義手や義歯を製作できますが、われわれ歯科技工士はそれが認められていません。歯科医師の管理、指示のもとであればできるのですが、それは現実的には歯科医院でしか直接見たり触れたりできないということになります。

 

当たり前のことじゃないかと思われるかもしれないですが、現在作られている義歯や詰め物、かぶせ物のほとんどは、歯科医院ではなく、歯科技工所(ラボ)という別の場所で作られています。つまり、間接的にしか作られていないということです。

 

義手や義足を間接的に別の場所で作ったとして、それが本当に患者さんにピッタリと合うものになると思われるでしょうか? パラリンピックの選手が使うような義足になれば、なおさら高度な調整が必要でしょうし、選手を直接見ながら合わせていくという熟練した作業が必要になると予想します。

 

本来ならば、義歯もそのように直接作り手である歯科技工士が患者さんと楽しく会話しながら共に作っていけたら一番いいんじゃないかと思いまして、当医院では院長のお力添えでそのようにしています。

 

しかしながら、それでも生身の口の中に完全に文句なく、自分の歯のような義歯を1回で作り上げるというのは、並大抵のことではありません。
保険診療の義歯などはおそらく数回の調整で終了というようなケースが多いと思いますが、そのような形で本当に絶妙な義歯になっているのか疑問であります。

 

もっと言いますと、義歯の場合、数回~十数回来院されて調整を繰り返すことで、何とも言えないいい感じの義歯になっていくのですが、保険診療での詰め物やかぶせ物の多くは、セットされた日に少し調整するだけで終わりというのがほとんどではないかと思います。
私もまだ十代の頃に通った歯科医院では、虫歯の治療は、削ってから型をとって、その次にセットしておしまいでした。何の疑問も持たなかったのですが、技工士になった今思うとかなり荒っぽいやり方じゃないかと思います。

 

たった1回の調整だけでセットされて、あとは何も確認しないままというのが問題です。義歯でしたら先ほど言いましたように、数回~数十回調整しないと良い状態にならないものです。詰め物やかぶせ物だからと言って、本当にたった1回だけでうまく行っているでしょうか。使ってみた後に、しばらくしてから確認するわけでもなく、何となくセットした時に大丈夫だったからということで、そのまま経過していると思います。

 

大きな支障がなければ、それでいいという考えですが、もしかしたら本当にいいかみ合わせにはなっていない可能性もあります。人には適応力があるので、若い年齢の人や歯がたくさんある人の場合には、他の歯の助けもあり、そんなに気にならないからということでそのままのケースも多いと思います。

 

ただ、セットした後も何度か確認して、本当にバランスよくかみ合わせの調整ができているのか、確認してもらったほうがいいかと思います。治療すればするほど、かみ合わせがズレていくなんてことがないように、丁寧な歯科医院で何度か確認を繰り返してもらうということをおすすめします。

入れ歯がはずれやすい。入れ歯がゆるくなってきた。入れ歯が動く。

入れ歯が最近ちょっとゆるくなってきたとか、入れ歯が動きやすい、はずれやすいという経験は、多くの入れ歯患者さんが体験されているかと思います。

 

この原因を、多くの歯科医師や患者さんは、ハグキがやせてきたからとか、残っている歯が動いたからと考えることがあります。つまり、ハグキに入れ歯がピッタリ合っていないからだろうととらえられています。

 

もちろん、そういう場合もないことはないのですが、入れ歯を作ってしばらく経過しただけの患者さんの場合には、ハグキや歯に問題があるのではなく、入れ歯のかみ合わせが変化したことによる原因がほとんどです。

 

かみ合わせの調整は簡単ではなく、丁寧に何度も調整しないとピッタリこないので、なかなかそういう時間と手間をかけて、歯科医師の先生がやってくれるというのは難しいと思いますが、このかみ合わせを全体的にバランスよく調整しないと、またすぐに入れ歯がゆるくなったり、はずれたりすることになります。

 

しっかり奥歯まできれいにかんでいる入れ歯というのがおそらく少ないと思います。
入れ歯は前歯に当たると落ちる作りになっています。
長年使用されていて、絶妙にかする程度に当たっている入れ歯だと大丈夫ですが、まだ長期間使っていない入れ歯ですと、前歯にあたれば落ちやすく動きやすくなります。

 

そして一番後ろの奥歯までしっかりとかませるのは、なかなか大変です。
必ずしも患者さんは、左右の奥歯をバランスよくかんでいるとは限らず、むしろどちらかで強くかんでいることが多いので、反対側の弱くかんでいる奥歯までしっかりときれいにかませるには、何度も調整を繰り返さないといけなくなります。

 

当医院では、先生の指示により私が細かく調整することもありまして、奥歯までしっかりとバランスよくかむ入れ歯を提供しています。
奥歯までしっかりかむ入れ歯は、ハグキにもキュッと吸い付きますので、総入れ歯でも入れ歯をはずすのが大変なくらいの入れ歯になります。

 

皆さんも、奥歯までしっかりとかめているか、一度確認してみてください。

入れ歯は、一輪車を乗りこなすようなイメージで。

院長が患者さんに入れ歯を説明する時に、一輪車という言葉をよく使います。

 

一輪車は、自転車よりもバランスがとりにくく、初めての人はそれなりに苦労しないと乗りこなせない乗り物ですが、根気よく練習をすれば、多くの人は乗りこなせるものです。

 

そういう意味で、はじめて入れ歯をされる患者さんや、いまいち入れ歯の扱い方がよくわからない患者さんには、わかりやすい言葉だと思います。

 

要は、入れ歯というのは、それなりにトレーニングしながら使いこなしていく道具だということになります。

 

しゃべり慣れるのにも、約2週間はかかりますし、食べ慣れるのにも同じくらいの期間がかかります。

 

われわれは、できるだけその患者さんにとって使いやすい入れ歯をオリジナルで作るのですが、患者さん自身のトレーニングと慣れはどうしても必要になります。

 

しばらく使われていると、変化もあらわれます。
その変化に対して、適切な処置や修正を加えて、より使いやすい入れ歯に調整していきます。

 

そして、私が先生とともに、患者さんを拝見していていつも思うのは、

 

ほとんどの患者さんが、自分が左右どちらで主にかんでいるか、アゴをどういう動かし方で動かしているか、ご存じないことです。

 

左右バランスよく動かせるのが一番いいのですが、なかなか左右対称に動かせる人はいないです。
ボールを左右同じように投げられる人が少ないように、やはり左右差がある人が多いです。

 

それでも、自分がどちらでかんでいるのか、もしかしたら片方ばかりでかんでいないかなど、ちょっと意識しながらかんでいただきたいですし、入れ歯を使う場合には、入れ歯は天然の歯ではなく、道具ですので、うまく使いこなすということを意識して使っていただけるといいかと思います。

 

トレーニングを続けると、逆に入れ歯を使ったことにより、左右対称にかめるようになったり、自分の歯の時よりもいろいろなものがかめるようになったりもされています。

 

無意識でかめるようになるためにも、特に、使い始めの入れ歯は意識して使われるといいかと思います。

うれしく、そしてちょっと悲しい患者さんのお言葉

先日、入れ歯ではなく、歯の治療のことで大学病院へセカンドオピニオンに行かれた患者さんがいらっしゃいました。

 

大学病院で診察を受けた際に、うちの特殊な金属製の入れ歯をその大学病院の先生が見られて、「これは良い入れ歯をされていますね。」と言われて、そしてはじめて、うちの入れ歯が価値のあるものだと知ったと、話されました。

 

これはうれしくもあり、反面ちょっと、悲しい気もしました。
もう10年近く通われている患者さんでしたので、逆にちょっと笑えました。
しかしながら患者さんは、歯の治療や入れ歯のクオリティの高さなんて何もわからないのは当然のことで、患者さんに理解してほしいということ自体がそもそもおかしなことであります。

 

われわれ専門職の者はただただベストを尽くして、入れ歯を製作するのみということです。

 

家族や親せきなどの入れ歯をこれまで何人も作ってきて、歯のメンテナンスは地元の近所の歯医者さんでケアしてもらっていて、その時も先生方から、「こんな入れ歯見たことない」とか、「これは僕では調整できないね。」などという話を聞くことはありました。
身内なので入れ歯の良し悪しを聞きやすいこともありますし、他の歯医者さんからほめてもらえる入れ歯なので、本音が聞けます。

 

でも患者さんは、やはり直接先生に本音で話せない部分というのは、どうしてもありますし、本当に良い入れ歯なのかどうかを問いただすこともできないでしょうから、うちの医院ではそのあたりをできるだけこちらから質問するような形にして、技工士の私もスタッフも患者さんの気持ちを察知するように心がけています。

 

入れ歯自体は他の歯科医院に負けない自信はありますが、最終的に患者さんが満足できているかどうか、不安な部分がないかどうかが一番大切になると思います。

保険診療で作る入れ歯の歯の大きさは、かなり小さくておかしい。

来院される患者さんの中に、以前、一度保険診療で入れ歯を作った経験があるという方も多いのですが、そのほとんどの入れ歯の歯の大きさが、ご本人のもともとの歯よりも、かなり小さいサイズの歯で作られていることが非常に多いです。

 

まだ残っている歯の大きさと比べてみても、あきらかに小さいので、いかにも作り物の歯だとわかってしまいますし、すぐに入れ歯だと気付かれます。

 

歯自体の大きさもさることながら、ピンク色のハグキの範囲が広くて、ハグキが目立ってしまっている方もいらっしゃいます。

 

もう少しハグキの部分をうまく彫刻して、歯がはっきりと見えるようにしてあげるか、もっと大きい人工の歯を使ったらいいのに。といつも思います。

 

歯科医院ではなく、技工所という工場でたんたんと規格品のような入れ歯を大量に作っていかなくてはいけない場合には、仕方のないことかもしれないですが、患者さんの顔全体の雰囲気や口元を見れば、やはり見た目に違和感があるのは、すぐにわかります。

 

本来はその際、歯科医師が修正をすべきなのですが、おそらく器用に修正できる歯科医師はほとんどいないので、そのままあまりいまいちな入れ歯がセットされることになっていると思います。

 

技術とセンスのある技工士が修正すれば、それほど時間のかかることではないので、できればそのようなことができるような体制を作れたらなと思っています。

 

保険診療ではそのような審美的な内容は、保険外になってしまうのでできないことになってしまうかもしれません。
ですが、歯を見た目よくすることは、髪形や身なりをきちっとすることと同じく、重要な社会性のある問題だと言えます。

 

保険診療でもこのようなことが認められ、全国3000万人と言われる入れ歯患者さんが、人と会話する際に、口元を隠すのではなく、笑顔でコミュニケーションがとれて、快適な生活が送れるように、見た目の回復という名のもとに、審美的な要素も保険診療の一部にしていただきたいと切に願います。

 

ただ、先ほども書きましたように、この作業は歯科医師では難しいので、歯科技工士のいない歯科医院では難しくなります。ですが、出張という形で歯科技工士が出向くことも可能でしょうから、国が保険診療の新たな項目として認めれば、入れ歯でも見た目のいい歯並びの人たちが世の中に増えるだろうと思います。

 

医療費削減の今の世の中で、多くの患者さんの強い訴えでもないとなかなか認めてもらえない内容でしょうが、社会的意義はかなりあると思っています。
外国の観光客が増えていますが、先進国の中でも歯に対する意識のうすい日本人の歯並びは、決して自慢できるようなものではありません。

 

でも本来、きれい好きで、オシャレな日本人ですから、少し意識を変えるだけで、人から見てもきれいな口元になり、いい感じの笑顔になるのは、そんなに難しいことではないと思います。

 

『国を挙げて、国民をいい笑顔にする』というと大袈裟ですが、それほど難しくなく、費用もかけずに、できる内容だと思います。
そのようなサービスが組み込めるような歯科医療になってほしいと思います。