2024/04/06
入れ歯専門技工士の関戸です。
総入れ歯の患者さんというのは、上のアゴか下のアゴのどちらか、または両方とも、歯をすべて失った人の入れ歯になります。ただ、歯の根っこの部分だけ残っている人もいるかと思いますが、アゴを入れ歯ですべておおって、全体的な入れ歯になった場合を、総入れ歯と呼んでいます。ご自身の天然の歯が1本もない入れ歯になります。
総入れ歯になりますと、もう歯が無くなったから歯磨きはしなくてもよいと考えがちですが、実は、ハグキを健全に保つためにも、歯ブラシでハグキも磨いてほしいのです。磨くというよりもさする程度でも結構ですから、刺激を与えてほしいのです。そして、ハグキにぴったり合った入れ歯を作って、しっかりと食べ物をかんでいただきたいです。
ハグキに合っていない入れ歯を使用し続けると、合っていない部分のハグキがだんだんとなくなって、ハグキの山が低くなっていく可能性があります。そうしますと、入れ歯が動く原因にもなり、入れ歯でうまくかめないということにつながってきます。
ハグキの山がしっかりとあって、そのハグキが引き締まっていると、入れ歯がとても安定してくっつきます。患者さんの中には、来院されたときもうすでに入れ歯の山はなくなっていましたが、ハグキの表面が非常にしっかりしていたので、ハグキの山の低い入れ歯でもぴったりくっついて生活されている人がいます。
山があればさらによくなりますが、鍛えられた引き締まったハグキでもぴったり合った入れ歯が作れます。そして、ハグキを引き締めるためにはどうすればいいかと言いますと、歯ブラシのブラッシングもありますが、しっかりと食べ物をかんでハグキに適度な圧力を加えていくということです。
かむ力は60kgと言われていますので、その力でしっかりかんでハグキを鍛えていけば、ハグキはかなり強くなり、入れ歯もしっかり安定したものとなります。
ハグキがしっかりするまでは、多少の痛さや食べにくさもあるだろうと思いますが、自分自身で自分に合った道具にしていくぞという意気込みで入れ歯を使っていき、最終的に自分のものにしていってください。それまでのお手伝いをわれわれが行っていきます。
総入れ歯がとても痛い時には、必ず調整をしないと、ハグキが痛すぎて入れ歯が入れられないという状態になってしまいます。そうなると、1週間以上使えなくなりますので、痛くなり過ぎる前に入れ歯の調整には行ってください。
少し痛いけど気持ちいいくらいの圧力でかんでいくと、ハグキは強くなっていくかと思います。総入れ歯の場合には、特にハグキだけで入れ歯を支えていますので、土台となるハグキを整えていくというのは、とても大切です。
ある段階まで進むと、入れ歯は落ち着きますので、それまでは少し大変な時期もあるかと思いますが、ぜひ乗り越えてください。
2024/04/02
入れ歯専門技工士の関戸です。
テレビを見ていましても、街中や電車内でいましても、入れ歯の歯並びの良くない人をたまに見かけます。もう少しましな歯並びにできなかったのかな?と思うことはしばしばです。
普通は、歯医者さんで型どりした歯の型を外注に出して、外注先の歯科技工士が患者さんの顔も見ないで歯を並べて、その歯並びを患者さんにチェックしてもらえるような歯医者さんはまだましなほうだと思いますが、歯並びのチェックもなしに仕上げてしまって、それで完成ということは非常に多いです。
ここで問題なのは、患者さんの顔に合わせて歯を並べていないので、多くの入れ歯の歯並びがいまいちな歯並びになってしまうことです。
特に上の歯の前歯2本は、顔というよりも目鼻立ちに合わせてしっくりくる位置に並べないと、なんだかズレたような、ボケたような歯並びになり、印象が悪いのです。
ここは、入れ歯専門の歯科技工士と相談しながら、より良い歯並びにしていく作業というのが一番効果的です。ご自身で並べ直される歯医者さんもいるかもしれませんが、餅は餅屋と言いますように、それを専門で毎日やっている人間が行ったほうが何とも言えないいい感じの歯並びになるはずです。
そうすると、入れ歯なのに、入れ歯とは他人にわからない、自然でありながらきれいな歯並びという感じになります。来院された時よりも、女性は美しく、男性はかっこよく変わってもらいたいと思いながら、日々歯並びを行っています。
入れ歯だけに限らないです。私は差し歯の専門ではありませんが、仮の差し歯も可能なだけきれいな歯になってもらいたいという思いで製作しています。最終的には、患者さん・先生・技工士の私で相談して決めた仮の差し歯をもとに、差し歯専門のプロフェッショナルな技工士に作ってもらいますので、特に心配はないかと思っています。
入れ歯・差し歯・ブリッジの歯並びで悩んでいる患者さんがいらっしゃいましたら、今の歯並びを改善できるかどうかはすぐにわかりますので、ぜひ一度ご来院ください。入れ歯の場合、お使いの入れ歯を修正することはできなくて、こちらで入れ歯を新たに製作していただかないといけないですが、歯並びが良くなった入れ歯での新しい日常生活は皆さん楽しそうにされてますから、ぜひ試していただきたいと思います。
2024/03/12
入れ歯専門技工士の関戸です。
当医院は自由診療で入れ歯をお作りしていますので、保険診療での国から決められているガイドラインに沿った治療以外の、さまざまな処置やサービスを提供することができます。
まさに、文字通り「自由な診療」ができます。
ではどんなことができるのか?といいますと、まずは、他の医院だとグラグラの歯を抜かないと入れ歯は作れないと言われることが多いのですが、当院では、抜かない状態のままで入れ歯をお作りできます。
そして、一度お作りして使っていく中で、歯が抜けてしまったり、患者さん自身がもう抜いてほしいと言われた時に、歯を抜いて、抜いたところに歯を追加することが、1時間ほどあればできます。それで抜いた歯の部分はしばらくするとハグキが下がってきますので、それも丁寧に裏打ちを行っていきます。
入れ歯専門の技工士がいますので、そのような歯の追加や入れ歯の修理・修正は状態によりますが、約1時間あれば、だいたい処置することが可能です
また、このような細かい処置をくり返して、最後にもう一度新しい入れ歯を新調することも行っています。抜ける歯の本数が多い患者さんの場合には、最後にはつぎはぎだらけの入れ歯になってしまうので、それではいけません。もう一度型どりからはじめて、新しい入れ歯を製作します。最後の歯が抜けるまでの期間によりますが、それほど長期でなければ、費用は最初の入れ歯に含んでいるのでいただきません。
入れ歯だけではなく、歯の治療も当然、時間をかけて確実に行っていますので、歯の治療が終了したあとに、治療した歯に合わせた入れ歯を、また新しくお作りしています。
1人の患者さんに合わせたオリジナルの治療計画を立てて、あせらず確実にゆっくり取り組んでいますので、手前みそですが、多くの患者さんは安心されていることかと思っています。
なかには、できるだけ早くやってもらいたいと言う患者さんもいらっしゃいますが、急がば回れといいますように、結局、あわてて作っても逆に調整回数が増えただけだということもあり得ます。長い期間をかけて悪い状態になってきたものは、それなりの時間をかけて丁寧に改善していくことが大切です。
2024/02/10
入れ歯専門技工士の関戸です。
私は、天然の歯は、天然の木のようだなと思っています。
天然の歯は、1本でもかなり強く、歯が多少グラグラしていても、食べ物をかめているという患者さんは多いですし、たとえ指で引き抜いたらスポッと抜けてしまいそうな歯でも、なかなか抜けたりしないものです。それだけ根があるということは大きなメリットだと思っています。
同じように、天然の植物でそれなりに大きな大木となっているものは、雨・嵐や台風が来ようがびくともしません。大地にしっかり根を張って生きていますので、力強いものだと思います。
歯もハグキとその下の歯槽骨にしっかりと根を張っているので、そう簡単にはダメにならないものです。
しかしながら、入れ歯はと言いますと、これは歯がないところに置いて使うものですので、動きやすく力も弱くなります。根を張っているわけではないので、取り外しできますし、天然の歯と比べたらやはり弱いものです。
ですので、逆に言いますと、入れ歯は、その分だけ余計にしっかりと考えて、設計して作っていかないと、口の中でうまく働かないのです。
例えば、植物はバラバラに生えていて、形も大きさも不揃いであり、簡単に言いますと、ぐちゃぐちゃに乱れながらも自然の美しさを形成しています。
天然の歯も一糸乱れずに並んでいる歯並びの人はほとんどいらっしゃいません。人工的に矯正治療した場合に、きちんと並んで見える歯並びの人はいますが、自然に生えた天然の歯でそこまで整列して並んでいる歯並びの人はいないと思います。
それでも、多少乱れて並んでいても、自然の歯並びは、自然の植物の美しさと同じように、独特のいい感じが表現されています。
ところが、入れ歯の場合には、このような乱れた歯並びでは、とてもうまくかめません。人工的にかなり考えて一番いいと思われる位置に、きれいに並べていかないと、痛くてかめないというような状態になってしまいます。
ただ単に、天然の歯に似せて並べてもうまく機能しないと言ってもいいかもしれません。入れ歯の場合には、天然の歯のような強さはないので、より効率よく機能的な歯並びを考慮して作り、しかも微妙な調整を、患者さんの口の動きに合わせて何度も調整していかないと、「しっくりくる」という状態にはなかなかならないものです。
ぜひ1本でも残ってる歯を大切にしながら、失ってしまった歯の部分には、適性に作られた入れ歯を入れて、それ以上は歯が抜けるようなことがないように、ケアをして行ってください。
2024/01/08
入れ歯専門技工士の関戸です。
新しく入れ歯を作ってセットされたとき、2~3日してなんだかハグキが痛くなってきたりすることがあります。その原因は、実際には細かく複雑なところがありますが、ざっくり大きく言いますと、型どりとかみ合わせの2つになります。
そして、型どりが原因の場合は文字通り先生のとった型と、患者さんの歯とハグキの型が合っていなかったのが原因で、入れ歯を入れるだけで痛みが生じます。
次に、かみ合わせが原因の場合、まずは高さが高い・低いの問題が大きいです。多くは高さが高いために、かみしめた時にハグキがグッと圧迫されて痛みます。これはかみ合わせが高すぎたので痛いのです。
また、かみ合わせは高さだけでなく、左右差、前後差、3次元的なゆがみが考えられます。多くの患者さんは、左右、前後にバランスよくかんでいません。どこかで強くかんでいたり、ズレてかんでいることがほとんどです。
そこを見極めて調整していかなくてはいけないのですが、これがなかなか難しくてそんなに簡単な調整ではありません。
しかも、患者さんのハグキも、すべてバランスよく強いハグキであるわけではなく、弱いハグキの部分もあれば、強いハグキの部分もあります。ハグキ自体がなくなってハグキの山がぜんぜん無い患者さんもいらっしゃいます。その場合、入れ歯がどうしても動きやすくなり、痛みやすくなります。
また、同じ先生が同じ患者さんの歯の型を2度3度型どりしても、まったく同じ型というのは存在しなくて、つまり2つと同じ型はないということですが、それで型自体に多少の誤差はどうしても生じるということもあります。入れ歯作りはなかなか難しい面がたくさんあります。
これらの誤差が調整して痛みがなくなる程度であれば問題ないのですが、調整しても痛みが続く場合もあります。それは、先生の型どりの問題もあるかもしれませんが、患者さんのハグキ自体が部分的に弱いという問題の場合もあります。
そのため、調整を繰り返しながら、食べる時に多少痛むものの、入れ歯を使い続けていますと、ハグキのほうがだんだんと以前よりもしっかりしてきます。すると、ハグキが強くなって引き締まって来まして、入れ歯とハグキの間にすき間が出てきます。そこを丁寧に埋めていく作業を繰り返すと、もう痛くなくかめるようになることが多いです。
不具合があるものの、このつらい期間をある程度我慢して越えて行かないと、入れ歯でしっかり食べ物をかむということが難しくなります。「ちょっと痛いからはずしておく」ということを日常的に続けていますと、いつまでも入れ歯が使えなくなりますので、激痛ではなく、痛気持ちいいくらいの圧力で使える範囲内で、ハグキを鍛えていくというのは必要かと思います。
また、先ほど書きましたようにまったく同じ入れ歯は2つとないので、入れ歯自体に慣れる、特に、新しい歯科医院で新しい入れ歯を作った場合、口が入れ歯に慣れるには、2週間~3週間はかかるとお考えください。それまでは、舌をかんだり頬をかんだり、しゃべりにくいという期間がどうしても発生します。
すぐに慣れられる患者さんもたまにいらっしゃいますが、やはりしばらく調整とトレーニングを繰り返さないといけない患者さんが多いです。1~2回の調整であきらめずに、ゆっくりあせらず取り組んでみてください。