2023/11/07
入れ歯専門技工士の関戸です。
だんだんと歯が抜けてきたので、そろそろ入れ歯を作らないといけないけれど、歯が全部抜けてから入れ歯を作ったほうがいいんじゃないか? と考えてしまう患者さんもたくさんいらっしゃるようです。
入れ歯というと、総入れ歯だというイメージをお持ちの患者さんに、このような考え方の方がよくいらっしゃいます。
ですが、入れ歯は、総入れ歯だけではなく、むしろ部分入れ歯の患者さんのほうが圧倒的に多いです。
つまり、歯が数本残っている患者さんのほうが絶対数は大勢いらっしゃるということです。
ですので、全部歯が抜けてから入れ歯にするという発想ではなく、まだ歯が残っている状態でぜひ入れ歯にしてもらいたいと考えます。
その理由はいくつかあります。
まずは、その患者さんが本当に入れ歯を使えるようになるかどうかは、作って実際に使ってみないとわからないということです。入れ歯を口の中に入れて過ごすこと自体がそもそもできないという患者さんはごくまれですが、いらっしゃいます。うちの医院でも数名いました。
ですので、現状で一度入れ歯を体験してみるというのは、とても大切です。歯がすべて抜けてから、総入れ歯にしたときに、とても使えないという状況になったとしたら、大変です。入れ歯には、慣れというものが必要ですので、できるだけ小さめの入れ歯から始めるほうが、より使い慣れやすいと思います。
2つ目は、しっかりしていない歯が残っていたとしても、その残っている歯をうまく治療して、将来的に総入れ歯になったとしても、入れ歯をしっかり固定するための装置として有効に利用できるということです。
総入れ歯の患者さんはすべて歯がない患者さんだと思っていらっしゃるかもしれませんが、一概にそうとは言えません。歯の根っこがしっかり残っていて、その根っこをうまく利用して、入れ歯を固定するための装置を、いくつもセットされている患者さんはたくさんいらっしゃいます。
そして、この歯の根っこがあることで、多くのメリットが生まれます。歯は抜歯と言って、根ごと抜かれると、ハグキがだんだん退縮していきます。ハグキの山が少なくなっていくのです。反対に、根が残っているとハグキの山しっかり残っていきますので、長期間ハグキが安定します。安定した状態のハグキで型をとって作った入れ歯は、当然、入れ歯として安定して使っていけます。
ぜひとも歯が残っていたら、抜けてからとか、抜歯してから総入れ歯にしようなどと考えずに、早めに入れ歯で生活していかれることをおすすめします。