総入れ歯の患者さんの注意点②

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総入れ歯の患者さんの注意点②

技工士の関戸です。

 

総入れ歯の患者さんは、上アゴであれ下アゴであれ、どちらかあるいは両アゴに歯がないので、言い換えますと、すべて人工の歯で入れ歯ができております。

 

ですから、天然の歯同士で上下でかみ合わせている所は1カ所もありません。かならず人工の歯でかんでいるということになります。

 

すると、人工の歯は、エナメル質でおおわれた天然の歯よりも弱く、使えば使うほど経年劣化してすり減っていきます。つまり、かんでいる歯の表面が削れてなくなっていくのです。

 

例えて言えば、革靴のかかとがだんだんとすり減ってくるような感じでしょうか。革靴のかかともいずれ交換時期が来るように、入れ歯の人工の歯もいずれ修正しないといけない時期はやってきます。

 

前歯に関しましてはかみくだく作用は少ないので、あまり交換するようなことはないですが、奥歯はやはり経年劣化して歯を交換するか、あるいは、挙上と言いまして、まさに革靴のかかとの修理のように、人工の歯の上に新しい材料を追加して修理する方法があります。当医院でも主にこの挙上という作業を、患者さんに合わせて定期的に行っております。

 

長年使っていて低くなってしまった総入れ歯のかみ合わせを、もう一度もともとの高さに戻して快適に使用できるようにします。ただ、この修正作業は、車のタイヤ交換や靴のかかと修正のように、その時修正したらおしまいというものではなく、しばらくかみ合わせの調整に通っていただかなくてはなりません。

 

一度、低くなってしまったかみ合わせを元の高さに戻したからと言って、すぐに慣れるわけではないからです。その理由は、低くなっていく過程で必ずしも正しく低くなっていないといいますか、左右前後にあるいは3次元的にズレながら低くなっていることが多いからです。

 

かみ合わせには、人それぞれクセがありますので、規則正しくすり減っていくわけではありません。なので、高さを元に戻したあと、使い慣れるまでしばらくの期間がかかります。特に、長期的に使っていて、かなり大きくすり減ってしまった総入れ歯の場合には、人工の歯を挙上して高さを増やした時に、まったく違う総入れ歯になってしまったと感じる患者さんもいらっしゃいます。それくらい大きな変化があることもあります。

 

できましたら、定期的にチェックを受けて、人工の歯のすり減りを適度に修正していくことが、総入れ歯のかみ合わせの長期的な安定にとって、とても大切な要素になります。痛くないからと言って定期的なメンテナンスを受けずに使い続けていくのは、実はそれなりにリスクがあるのです。

 

総入れ歯のかみ合わせの高さが低くなると、以前よりもかみにくくなり、逆に変な力が加わってハグキが必要以上に圧迫されることにつながります。また、かみ合わせが低くなると、下アゴが前に出て、アゴがしゃくったようなかみ方になりますので、なんとなく見た目にもアゴがしゃくったイメージに見えてしまいます。つまり審美的にもあまり良くないということになります。

 

さらに、低くなるということは、口の中の空間が狭くなるので、もしかしたら発音もしにくくなる可能性もあります。食べ物も狭い空間で食べているので、舌で回しにくい感じがあるかもしれません。総入れ歯にとっては、かみ合わせの安定がとても重要な要素になってきますので、しっかりバランスよくかめているかどうかの確認はぜひ定期的に行ってください。いつのまにか、奥歯でかんでなくて前歯に近いところでかむようになっているというようなことはしばしば見受けられますので、少し注意しながらご使用してください。

 

また、今回は主に総入れ歯の患者さんについて書いておりますが、前歯だけ自分の歯が残っていて奥歯は全体的に入れ歯であるような患者さんにつきましても、当然、奥歯が時間とともにすり減ってきますので、上に書きましたような現象が同じように起こってきます。

 

むしろ、奥歯がだんだんとすり減ってきますと、残っている天然の前歯に強くあたってきたりします。すると、前歯がゆらされてきて、歯周病になりやすくなる可能性もあるかと思いますので、総入れ歯の患者さん以上に、奥歯だけ入れ歯の患者さんも入れ歯のケアには注意していかれたほうがいいと思います。

 

奥歯が低くなることで前歯に強くあたってきて、いずれ前歯がやられてくる。最終的には総入れ歯に近づいていくというのは、症例としまして、決して少なくはありません。歯のケアとともに、入れ歯のメンテナンスも同様に大切にしてください。