自由診療の入れ歯
よく患者さんから「この入れ歯の料金は、この他にどのくらい費用がかかりますか?」という質問を受けます。
自由診療というと一体いくらかかるのだろうか?と不安に思うことは当たり前のことですし、治療が始まって、追加料金、さらに追加となって費用がかさまないだろうか、などと考えられるのだと思います。そのため治療に集中しにくくなるということも生じます。
例えば、あまり良い例ではないかもしれませんが、銀座の高級クラブに行ったとして、ボトル1本10万円と言われても、もちろんそれだけの料金で済むとは誰も思わないでしょう。一体いくら払わなければいけないのだろうと考えながらお酒を飲んでも、決しておいしくありません。歯科医院の自由診療もこれに似たイメージを持たれているのではないかと思います。
医療において高級感を出すことは悪くないことと思いますが、値段をはっきり提示しておかなければ優良店とは言えません。私としては初めに患者さんに提示した料金以上に費用がかさんだ場合、自分の診断が甘かった以外のなにものでもないので、自分の責任でなんとかするべきであると思っています。中にはお金はいくらでも出しますので最高の治療をして下さいという方もいますが、こちらの説明をきちんと理解できない人は、いくらお金を積まれてもお断りです。
私の医院では基本的に総額で見積りを作りますので、お約束したところまでをすべて治療した場合という意味になります。つまりそれ以上はかからないということが前提です。
なんでもそうですが、もしプロの高級店を看板にあげるなら、初めの目測を見誤らないくらいはできないと恥ずかしいと思うのです。またできなかった場合には自腹を切ってでも責任を取るのが高級店の誇りではないかと思います。
治療が始まって「仮歯がいくらかかります。」気に入らなくて作り直しを希望したら「追加でいくらかかります。」と言われたという話は、歯科では決してめずらしくありません。
お客さんが気に入らないものをいくら努力して作ろうが、一銭の価値もありません。プロは努力の報酬をもらうのではありません。結果に対して報酬をもらうものだと思います。
私は患者さんの気に入らないものを作ったのなら、作り直すことは当たり前ですし、希望どおりにできない場合にはなぜできないのかを理解させる工夫をすることができます。患者さんは何も分からないわけですから、理解してもらうことは治療の大切なプロセスなのです。それが料金のことが引っかかって言い出せないような治療なら、真の入れ歯作りはできないでしょう。
銀座のクラブなどに行く人は、お酒よりもサービスやステータスを目的に行く方が多いわけですから、その料金を払ってそこで飲めることもお客さんの満足に入ります。そのため、料金はむしろ明示しない方が、高級感が増すからいいと言えます。
しかし医療は特別な人を除き、ほとんどの人が、治ることを目的に来院されるわけですから、無駄な高級感を演出するより、払うお金をはじめにきちんと決めておいた方が、安心して治療できると思います。
知って得する!入れ歯の話