入れ歯のスタートラインは人によって違う
「試せる入れ歯」は、今後の将来予測をして「今だけが快適な状態」にならないように考えられた、あくまでもきちんとした入れ歯です。
その後、その入れ歯を基準として、具体的な不具合や改善点を話し合って、修正を加えていきます(カスタムアップといいます)。
「試せる入れ歯」は名前から誤解されそうなのですが、実はずっと使い続けていくことも可能なように作り込んでいますので、1回目に作ったものでも、思っていたものより快適で「これで最低クラスのものなんですか?」とびっくりされる方もいます。
一方で、「入れ歯になるとこういうことになるんですね」と少なからず落胆される方もいます。
このことからもわかるように、初めて入れ歯を入れた時に立つスタートラインは人によって違います。
ただ、どんな場合でも、入れ歯を外せば元の状態に戻せるというところ共通しています。取り返しのつかないような処置をされる前に、これから付き合うことになる、ご自分の入れ歯についての理解をきちんと深めていただきたいと思います。そして今後の処置についてできること、できないことをきちんと理解していただき、治療や入れ歯のデザインを相談して決めていきましょう。
「これで最低クラスのものなんですか?」という方は、すみやかに虫歯や歯周病の治療に進んでも良いでしょう。修正はこの時点ではあまり進めずに、歯の治療に取り掛かった方が有利な場合が多いです。
もちろん、この時点でカスタムアップ(より快適な仕様に修正する)して、入れ歯を快適にすることが良い場合もあります。単純にですが、歯がしっかりしている人と、危うい人で、方向性が大きく分かれるところです。しかし、これも相談して決めていけば良いのです。
一方、「入れ歯になるとこういうことになるんですね」と肩を落とされる方は、まず1週間、がんばってつけてみてください。そして1週間後、経過をおたずねします。
その時に、「慣れるものですね」という方は全く問題ありません。先ほどの「これで最低クラスのものなんですか?」という感想の人と同じように、歯の治療を進めていけます。
残念ながら「慣れないです」という方は慣れない原因を考えないといけません。
またしっかりした話し合いと相談が必要になります。
「痛いのか」
「発音できないのか」
「オエッとえずくのか」
「異物感が大きいのか」
…理由はいろいろあると思いますが、一つ一つ相談して解決していくことが必要です。
「痛い」からといって、単純に痛いところを削れば良いというわけではりません。
「試せる入れ歯」はこういった人にこそ真の力を発揮します。
痛い場合、まずは痛くないようにカスタムアップします。また1週間使ってみて、次の通院時「だいぶ良くなったけれどまだ痛い」と言われたら、前回の調整が間違っていないことを確認して、また相談し、さらに痛みが起きにくいようにカスタムアップします。
1週間後、「痛みは改善したけれど今度は違和感が気になる」といわれたら、痛みの不具合はなくなったことを確認し、またまた相談し、今度は違和感を減らすようなカスタムアップをします。さたに1週間使ってみてもらって「違和感も減ったし、発音が改善された」と言われたら、もう少し違和感を取り除くようにカスタムアップします。このように、とにかく時間がかかります。相談と修正、そして使ってみることの繰り返しです。
しかし、この時点でまだ虫歯や歯周病の歯には一切手を加えていません。入れ歯を作る前と何ら変わらない状態ですので、患者さんには「しまった、これならやらなければ良かった」という後悔はまず生じません。
ただ、ここを修正したら、違うところに不具合が出て、こちらを修正したら今度はあちらに不具合が出るというように、不具合が変化していくこともあり、本当に合う入れ歯に近づいているのかと不安な思いで過ごす期間がある人もいます。
しかし、1ヵ月付き合ってください。今まで最長の方で、1ヵ月半ということもありましたが、たいてい1ヵ月です。そこで必ず結果を出してみせます。
カスタムアップによって、不具合がなくなったらようやく、虫歯や歯周病の治療に移っていきます。
「入れ歯治療の新発想」
第1章 「逆転の発想」から考える入れ歯治療
第2章 新発想の「試せる入れ歯」
第3章 日本人に合った理想の入れ歯とは
噛みやすく、薄く、軽い 新開発の金属製入れ歯「ディアレスト」
第4章 入れ歯作りの真髄 私の入れ歯作りに対する取り組み
第5章 患者さんの本音に答えます
Q.自由診療は、保険診療と違って、なぜこんなに費用が高いの?